ちゅら太郎
石垣へ出かけては、ホテルから一歩も出ず、夜は仲間と深夜まで飲み明かす。まあ、時間の無駄遣いっちゅやつやね。これが一番の贅沢であるのだが、たまには、ホテルから出て足をのばそう。
船に10分も乗れば行くことができるというから、船は30分に1本でているらしいから、行ってみてつまんなかったらすぐに戻ってくることも出来るから、竹富島に行ってみようと思い早速でかけた。
竹富は、開発デベロッパーの手が島に入ることを頑なに拒否することで昔からの島の風景を残し、その風景が島の観光事業を成り立たせている。竹富には年間40万人が訪れるという。一日平均1000人が観光に訪れている計算になる。
日本中が開発という名の下で破壊されつくしてしまい、あのなつかしい原風景が日本中から消えかかっている今日。残すことで開発するというこのコンセプトは素晴らしい。湯布院などと共通するところがある。もちろん、ガス、水道、電気などの生活のライフラインは、風景を邪魔することなくがっちりと開発され島の住民を守っている。一時は激減した人口も、島で観光という仕事があるから今は増え続けているらしい。地元民も帰ってくる
他府県からも移住してくるようだ。
さっそく牛車に乗った。
わたしはガイドの何々です。ようこそ竹富へ。この水牛は利口なやつで、指示しなくてもコースをおぼえていて、勝手に一周します。いわばオートマティック車です。スピードはゆっくりゆっくりの竹富流ですから、お急ぎの方は歩いていって下さい、と牛車は動き出した。
と思ったら、牛君いきなりたちどまった。ケツがひくひくしだした。自然現象ですしばらくお待ちをと、ガイドの何々君牛車を飛び下り、バケツを用意し牛君の小便を受ける。動き出したばかりなのに、ずいぶん長いこと用をたしていた、まあ、そうしてゆっくりと牛は、民家の横の白い砂が敷き詰められた道を右に曲がり左に曲がって町を一周した。
ガイドの何々君が歌ってくれた「あゆたやゆんた」が物悲しかった。
この牛君の名前はなんですかと客の誰かが聞いた。
「ちゅら太郎といます。NHKの朝の連続小説『ちゅらさん』の第一回目の放送の牛車のシーンに出演してから、ちゅら太郎と言われています」へえー。長いこと用をたしていたこの水牛は、有名な牛君なのだ。
『街道をいく*先島諸島への道』で竹富を訪れた司馬遼太郎さんが泊まった高那旅館の庭でオリオンビールを飲んだ。
昼は観光客だらけだが、夜は静かなものらしい。今度は是非島で泊まりたいものだが、予約で半年ほど先までいっぱいらしい。
台風15号が近づいている。明日明後日にも石垣直撃のようなので、名残は惜しいが島を後にし東京へもどった。