年末年始本
巨人軍のオーナーであり読売新聞の最高責任者であるナベツネこ
と渡邊恒雄氏のことを毛嫌いしていた。いつもホテルで誰かと夕
食をしていて、テレビなどで報道される渡邊氏は、酒の勢いも借
りての暴言三昧のエラソウナ権力者親爺そのもので、プロ野球を
だめにしているのは、このオッサンの所為じゃないか!諸悪の根
源ではないか!と毛嫌いしていた。
ところが最近、渡邊氏に対する評価に変化が現れてきた。
毎朝、読売新聞を読んでいると、読売新聞の政治欄が他の新聞よ
りもかなり充実しているのは、やはり、渡辺氏が政治部の敏腕記
者だったことに由来するのだろうと思い当たったのだ。
また、他誌にくらべ、読売新聞が圧倒的な販売部数を誇っている
のは、強引な販売戦略ゆえではあろうが、それでも、読者に支え
られていることの証明であり、紙面で他誌の追従をゆるしていな
いのだろうと、思い当たったのだ。
評価に変化が現れてきたといっても、好きになっちゃったという
ことではない。ただ、テレビなどで見るあの態度ゆえ大嫌い!と
一方的に毛嫌いをしてていいものだろうか。渡邊恒男と云う男が
いったいどういう人物であるかを知る必要があるのではないか。
と、変化してきたのである。知った上で、好き嫌いは個人の自由
であろう。
そこで、調べてみると『渡辺恒雄回想録』という本が出版されて
いて、戦後日本政治史の裏面というコピーも書かれていた。別に
政治の裏面そのものには興味はないが、渡邊氏は、政治記者の現
場を通じて裏も表も見てきたのだから、ついでといってはナンだ
が、面白い話が満載されているかもしれないと、早速買いに出か
けたが、そこの書店では在庫がなかった。
書店の女主人に、そんな本ありましたかねえ、という顔をされた。
渡邊本は後回しにするとして、年末正月用本として、数冊買い込
んだ。
『天皇と東大』立花隆著:文芸春秋社刊。
帯のコピーは、ブログで勝手に引用していいのかなあ、でも帯は
宣伝文句であるので、本の宣伝として軽く引用させていただく。
「日本人はいまこそ近代史を学び直すときなのである。大日本帝
国はなぜ、どのようにして死んだのか。そこがわからないと日本
の未来も見えてこない」(著者)
東大もある意味で近代史の象徴であろう。天皇と東大を軸にし近
代を語るという視点が凄い!さすが立花隆。分厚い上下刊2冊だ
が、冬休みを利用して読みごたえがありそうだぞ。
『私の百人一首』愛蔵版:白州正子著:新潮社刊。
白州さんが、愛蔵していた京都の骨董屋で買い求めた江戸時代の
百人一首のカルタが写真で掲載されていて、一首目から百首まで、
詠み人 と時代背景と詠まれた歌を解説している。
一首目の天智天皇の歌。
「秋の田のかりほの庵のとまをあらみ
わがころも手は露にぬれつつ」
秋のたわわに実った黄金の稲穂の田園風景をわしづかみにし、時
の権力者がたかだかに歌い上げたような雄大な印象だが、この歌
は、稔った稲が鳥や獣に食べられないよう小屋をつくって管理し
ているが、とまで葺いた屋根がこわれて雨漏りがして服が濡れて
しまった、私も泣いているよ、という意味の「労働歌」で、天皇
のお歌ではない。藤原定家の編集によるものであろう、という解
説からすでにおもしろい。
しかも百人一首。正月っぽくて、まことによろしい。
近代歴史本に文化系本。これに、戦後政治史の渡邊本が加われば、
冬休みは退屈しなくてすみそうだ。