2006年3月4日
宮崎駅の構内の商店街にある本屋で藤沢周平「獄医・立花登手控
え」を買う。「闇の傀儡師」を宮崎・鹿児島の旅で読もうと思っ
ていたのだが、その前の滋賀県の往復で読み終えてしまっていた。
しかし、本を読むスピードが速くなったものだ。600ページに
及ぶ長編を2日間で読んでしまうんだから。
この25年で約5000冊を読んだことになるが、ということは
一年毎で200冊読んだ計算になる。一年は365日だから2日
で一冊強。もちろん読み始めた頃は、もっと時間がかかっていた
が最近では長編は2日だから、短編・中編は1日くらいで読み終
える。飯食ったり仕事したり寝たりする以外の時間で読むのだか
ら、よほど早く読めるようになったのだ。司馬遼太郎さんほどで
はないけどね。あの人はもの凄く早かったそうだ。
それはそれとして。
鹿児島へ向かう列車は単線で久しぶりにのんびりとした汽車の旅
だった。先頭の1号車の客は私ひとりだった。そろそろ都城にさ
しかかる辺りで広い平野にでる。右手方向遠くに韓国岳・高千穂
岳が見えている。暖かい日で空気がまったりとしているようでい
かにも春らしい景色の中汽車は走る。
有名な鹿児島の温泉宿「雅叙苑」の亭主のTさんが、霧島神宮前
で下車をするならば迎えにいきます。「天空の森」へご案内しま
すよ。との伝言をもらっていた。一山を一部屋だけのために開拓
した宿「天空の森」に立ち寄るのはとても魅力的な誘いだったが、
行ったらTさんと露天風呂で霧島連山を眺めつつ話し込み、きっ
とライブに間に合わなくなる、、、、という予感もしたのでその
まま鹿児島中央駅に向かう。
霧島神宮前駅に「天孫降臨の神社・霧島神宮」と案内板が立って
いたが、高天原伝説は2つあって、1つが宮崎と大分の県境にあ
る高千穂で、もう一つが宮崎と鹿児島の県境にある霧島連峰の高
千穂岳。
宮崎の高千穂町出身のKさんは県北の高千穂に高天原があるとい
い鹿児島の「雅叙苑」のTさんは、霧島連峰の高千穂岳だという。
実際にあるのか行ったことがないから分からないが、霧島高千穂
岳のてっぺんには、海とも地ともおもえないドロドロした沼のよ
うな状態の世界に「天のぬ矛」を刺し、引き上げた「ぬ矛」の先
から最初に落ちた一滴から淡路島が生まれたという国産み神話の、
その「天のぬ矛」が今でも刺さっているとTさんはいうのである。
鹿児島駅に着くと主催者のK&MのK社長の出迎えを受け、駅前
のトンカツ屋で昼飯を食った。黒豚ロースカツでKさんに言わせ
るとこの店が鹿児島一だとのこと。分厚くてめちゃくちゃ柔らか
いトンカツだった。コンサート終了後の夜の食事会が黒豚のしゃ
ぶしゃぶだとは知らない私は、昼飯で黒豚を腹一杯食ってしまっ
た。
鹿児島文化ホールに集合したお客さんはめっちゃくちゃ熱かった。
布袋もご機嫌だったようでバンドメンバー紹介が絶妙で、お客さ
んはもちろん、ステージ袖のスタッフは爆笑もんで腹をかかえて
笑っていたなあ。宮崎の退院直後のシャチン坊のMさんがいたら、
間違いなく腹の傷口が開いてしまったことだろう。
友人の寿司や「野村」に顔を出し、美味い物をすこしつまみ焼酎
のそば湯割を数杯飲んで、すこし遅れて打ち上げに参加。この黒
豚しゃぶしゃぶには、おそれいった。しゃぶしゃぶのタレにポン
酢やごまダレを使わず、スープに通した黒豚をそのまま食べるか
すき焼きのように溶いた卵につけて食べるのだが、こんな美味い
食い方があったのかとびっくり。もちろんキメ手はスープにあり、
北海道出身のご亭主の創作しゃぶしゃぶで、昼も夜も黒豚づくし
の鹿児島の旅だった。