2007年10月31日
「余はいかにして鉄道愛好家となりしか」小池滋著。
は、内村鑑三の著書の表題
「余は如何にして基督信徒となりし乎」のパロディーで
あるのだが、東京駅のキオスクに並んでいたこの本を見
つけたときにはそれが分からず、<余>などという言葉
から明治時代の子爵や伯爵という旧貴族階級の人が書い
た本かと思っていた。ところが、この著者小池滋さんと
言う人はそんなに古い時代の人ではなく、東京大学文学
部卒後、東京都立大学人文学部の教授、東京女子大文理
学部の教授を歴任し、英国の19世紀の作家チャールズ・
ディケンズの研究者であることがわかった。そして、こ
の本を読み進むにつれ、おもしろくていつしかこの古め
かしい表題にも違和感をおぼえなくなりというか表題の
ことなど忘れ楽しんで読み終えて後、本のあとがきを読
んでやっとこの本のタイトルが内村鑑三の表題のパロデ
ィーであることを知った次第。なーんかどこかできいた
ことがあるタイトルだなーとは思っていたんだが、ただ
残念ながら文学知識不足(文学研究者の小池さんと比せ
ば当たり前であるといって威張れるものではありません
が)小池さんの意図を理解することはできなかったと正
直に白状しておきます。
鉄道好きな人のことを鉄道マニアという。今は早期退職
をされ、今日はゴルフ明日はカラオケ明後日はオジサン
バンドでシェケナベイビーと唄いまくり悠々自適な趣味
生活をしているPさんという先輩がいる。この人が溜め
池にある某レコード会社にいたときに知り合い、無役の
宣伝マンと無名のマネージャーというコンビで全国のラ
ジオ局、有線、レコード店を宣伝して歩き回った。Pさ
んは陽気な人で、地方で仕事が終わり飲み屋なんかに行
くと一人で場を盛り上げてくれるものだから、しがない
場末の飲み屋もはなやかになって、ドサ周り宣伝コンビ
も1日の仕事の疲れも忘れることができたものでした。
ただ、Pさんはお酒が強くない。店の姐さんにすすめら
れるままに飲みに飲むのはいいけれど、最後はつぶれて
しまうのが常で、名古屋のオカマバーでの一夜は
「そのままでいいわよォ。ワタシの家にPさんを泊めて
あげるからァ」
と蝶と名乗るオカマのママは言うけれど、そしてまたP
さんはここで寝てもらって構わないからアナタはワタシ
の部屋に来ない? と言われても、
「そうですか。ではよろしくおねがいします」
ともいかず、小太ったPさんを担いでホテルまで帰った
ものでございますが、そんなことは名古屋だけではなく
札幌でも博多でもあったものでございます。
そのPさんが鉄道マニアであった。埼玉大学時代は鉄道
研究会に所属していて、当時流行ったブルース・リーの
主演映画「ドラゴン怒りの鉄拳」をもじって「埼玉大学
怒りの鉄研」とPさんは自称していた。さて、鉄道マニ
アは日本だけでなく英国にも欧州にもアメリカにもいる
が、では鉄道マニアというのは英語でなんというか?
レールウエイマニアというのだろうか。小池さんはこう
書いている。要約して引用する。
「railwai mania という言葉は英語にあ
るが、これはたしかに鉄道好きな人を指す言葉ではあ
るが意味が違う。どういう意味かというと、だれでも
鉄道会社の株を買おうと熱中した現象を指す。イギリ
スで最初に鉄道マニアフィーバーが起きたのは今から
150年ほど前で、鉄道の便利さが世の人に知られる
につれ、利用者は増え、会社は儲かり株主への配当も
年10%にもなった。鉄道は成長産業となり新規参入
鉄道会社が後を絶たず、その株は人気株となったが、
乱立した鉄道会社で客の奪い合いとなって赤字路線も
出て倒産する会社も相次ぎ、鉄道の株に張った人々の
中には大損をこいて自己破産をする者も相次いだとい
う実に恐ろしい歴史上のバブル事件を示す言葉である」
これに比べれば日本語の「鉄道マニア」は実に天下太平
でのどかなものである。鉄道が飯より好きで、いろいろ
調べたり乗ったりすることに熱中している人たちを意味
するのだから、最近は「鉄道マニア」とか「鉄研」など
とは言わず「鉄ちゃん」と呼ばれているそうである。
そういわれればPさんも鉄ちゃんのほうが似合っている
し、「南蛮阿房列車」の著者:阿川弘之さんのマニアぶ
りも、お仲間の北杜夫氏や遠藤周作氏からの指摘通り、
鉄道好き以外の者にはナンの興味もないことに熱中する
あまりは鉄ちゃんと呼ぶのがふさわしい。
では、レールウエイマニアでなければなんと呼ぶのか。
簡単にレールウエイ・ファンでも通じるそうだが、ユー
モラスな響きをもった俗語としてレールウエイ・バフと
いうらしい。バフはバッファローのバフで、1920年
代のアメリカのボランティアによる民間人消防団員が制
服としてこの皮の制服を着ていた。ところが、どこにも
火事場見物の好きなヤジ馬がいるもので、そうしたヤジ
馬をいつしか俗語でバフと呼ぶようになった。きっと消
防団員と同じ制服を着て気取っていた連中がいたのだろ
う。そこから意味が広がって何でもあることが熱狂的に
好きな人、プロ以上の知識を持ったアマを指す言葉にな
ったそうである。
ここで鉄道マニアの鉄ちゃんの世界でしか通用しないオ
モロイ余談をひとつ披露しておく。
煙草をやめることを=「電化する」
というのだそうである。わかったかなー。わからないか
なー。鉄ちゃんの憧れが蒸気機関車だということだけ言
っておこう。イギリス人のバフに、この言い方は英国に
はありますかという質問に彼は大笑いして、ありません
が是非流行らせたいと答えたそうである。
ここまで書いて、来客到来である。ニーハオと言ってい
る。わざわざ北京から訊ねて来られたのである。さっそ
く会議に入らなければならない。この本について書くこ
とは山ほど有るが、もし興味を持たれたら自分で読んで
いただくことにして、今日のブログはこれでおしまい。