2009年1月30日
ルーリン彗星接近。
今度会えるのは数千年後?
2月下旬に地球に最も近づくルーリン彗星を、天体写真
家の中西昭雄氏が1月28日の早朝に撮影した写真が朝
日新聞の1面に掲載されていた。撮影場所は長野県富士
見町の入笠山(にゅうかさやまと読む)。
真っ黒な宇宙に無数の星がきらめく中、前後に2つの尾
を持つ青い彗星が写っている。写真の右上に長くのびて
いる光りが太陽と反対側にでているガスでできた尾。
左下へ少し広がってのびている尾が彗星から出たちりで
太陽の方向に向かっているので「アンチテール(反対尾)」
と呼ばれるらしい。
ハレー彗星は子供の頃に見た。
1960年代の愛知県岡崎市の町はずれの高台では星が
よく見えた。夏には天の川が天空を横たわり、七夕の伝
説の織姫と彦星もはっきり肉眼でとらえることができた。
真冬にはオリオン座が輝き、空には無数の星があった。
風が強い日は、星がこきざみにふるえているようだった。
毎日夜になるとぼーっと放心したように星をながめる僕
に親父が星座表を買ってくれ、いつしか春夏秋冬の星座
のほとんどを覚え、それから随分と長い間僕は天文少年
だった。我が社のIRC2というのも星の名前である。
記号の意味は「強力な赤外線を放つ2番目の天体」。
IRC2社にはヘールボップと名づけられた部門がある。
昔、子供達と富士急ハイランドで遊んだ。富士急ハイラ
ンドには千分の1に縮小された富士山があり、中に入れ
るようになっていて富士山の内部はこうなっていると見
れるようになっていた。このミニ富士山は創業者により
作られたたもので、明治時代に生まれ、子供達のワンダ
ーランドをつくろうと考えた革命的なその人は科学者で
もあった。
だが、土産物屋はいただけなかった。子供達のワンダー
ランドにもかかわらず、売っている物は山梨県特産のほ
うとう(うどん)であり、富士急饅頭であり、手ぬぐい
であった。
夢の国ですからゴミ箱にゴミが溢れていてはいけません
と、すべての従業員がゴミ拾いに徹し、アーケードには
夢の国の住人のミッキーやミニーやドナルドがあふれて
いるディズニーランドとは、キャラクターライズ、マー
チャンダイジングに対する考えが天と地ほどの差があっ
た。
それをきったけに、たんに「アーティストTシャツ」
「キャラクターグッズ」などとは一切考えず、マーチャ
ンダイズはどうあるべきかを模索するようになったのが、
約12年前の3月のこと。
その1997年にはヘールボップ彗星が約400年の周
期で地球に最接近した。前回の最接近は関ヶ原の戦い前
夜の時代で、この彗星を見た日本人の中には徳川家康も
いただろう。
ヘールボップは3ヶ月あまりも天空に輝き続け、ロンド
ンで、高層圏を飛ぶ飛行機の窓から、小笠原諸島へ渡る
太平洋航路の海原で、ヘールボップ彗星をみつづけた元
祖天体少年の僕は、あたらしく始める我が社のマーチャ
ンダイズ部門にヘールボップと命名したのだ。
ルーリンは鹿林と書く。
2007年台湾の鹿林天文台の観測により発見されたこ
の彗星は、ルーリンと名づけられた。日本の国立天文台
によると、2月24日ごろに地球に最接近し、真夜中な
ら南の空高く土星の近くに6等級以上のあかるさで見え
るという。この彗星の軌道周期はすくなく見積もっても
数千年以上といわれる。これは見逃せない天体ショーで
あるが、はたして数千年後の最接近時に地球上に人類は
生き残っているのだろうか。我々がルーリンの最後の目
撃者になるのではないか。