2010年1月20日
子供の頃の岡崎市のわたしの家のあった中町には銭湯が
ひとつではなくふたつかみっつあって、それぞれが子ど
もの足で10分はかからないほどの近さにあったくらい
銭湯は生活に溶け込んでいた。
中町を東にはずれていくとしだいに田や畑がおおくなり、
そういった所にある農家は自宅に風呂をもっており、中
町の西側は町の中心街になっていて、そういう商店街に
ある家は身上のよい家もおおく内風呂があった。
中町は商店街もあるが外れであり身上のよい家もあれば、
ブルカラーとホワイトカラーが入り交じったように風呂
がない市営住宅に住んでいる人々もおおく、銭湯がいく
つもあったのである。
こどもの頃は親につれられ銭湯に行ったが、中学生にな
れば近所の友達と連れだって銭湯に通った。風呂に浸か
り近所の大人といっぱしの風呂談義もした。
「そうかね。K先生はまだ甲山中学にいるのかねえ。バ
ス通りの公設市場の角を北に行くとお菓子屋があるね。
あそこで店番をしたり、店の前を掃除しているおばち
ゃんは(おばちゃんといっても20代の人であるが、
中学生からみればオネエチャンは姉やせめて高校生で、
二十歳をすぎた大人の女性はおばちゃんだった)あの
おばちゃんは菓子に嫁いだわしの娘だがね、あの子が
中学の時の担任の先生がK先生だったんだよ。そうか
お元気でいらっしゃるか。音楽の先生だったからあの
子は歌が大好きになったんだよ。いまなんて言ってた
かねえ? その歌を歌って人なんだがね」
「ビートルズです」
「え? ずーとるび?」
「ちがいます。ビートルズです。ジョンとポールとジョ
ージとリンゴがいるんです」
「所ジョージがいるの? 林檎も? 沢山いていろんな
ものがあるんだねえ。昔の歌手はそんなにいなかった
よ。三橋三智也とか春日八郎とかね。ひとりだったよ」
「アメリカ人かね」
「いいえ。イギリス人です」
「じゃあ、何語で歌ってるんだい?」
「英語ですよ」
「アメリカじゃなくても英語を歌うんだ。わしゃイギリ
ス語だと思っとったよ」
「英語はイギリスが先ですよ」
「そうか。アメリカはイギリスのまねしとるのか」
「まねじゃなくてイギリス人がアメリカにいったんです」
「いろんなこと知っとるなあ中学生になると」
「音楽が好きなら娘さんに聞けばわかるんじゃないです
かねえ。ビートルズって」
「わかるかねえ、、、、。それよりも湯がぬるくないか。
手をパンパンと叩いてみてくれんか。そういえばこの
間、店の前を掃除しながら、りんごーのはなびらがー
って歌ってたからなあ。英語の歌じゃなあ、、。そう
いえば、あんたら英語喋れるンかァ?」
「喋れないですよー。まだ習い始めたばっかりですし」
などと銭湯で会話をしながら大人との距離を縮めていっ
たものだった。
話はかわって現在の今朝、しんぼーさんが、風呂で死ぬ
件数がとても多くなってますから気をつけてくださいと
テレビでやっていた。しんぼーさんというのは大阪よみ
うりテレビのアナウンサーで、数年前から日本テレビに
て東京進出をし、今は全国ネットで名が知れている人す。
で、しんぼーさんがその時に、風呂場での死者の数はア
メリカやイギリスと比べて日本が圧倒的に多いと発言し、
共演者が、えー!そうなんですかァー!。とあたかも日
本人は風呂で死ぬ、欧米人は風呂で死なない的な感想が
スタジオに流れたが、よく考えてみれば風呂に入る機会
と回数は欧米人に比べ日本人の方が圧倒的に多いのだ。
現に、一昔前の岡崎のこどもは銭湯に通って大人と風呂
談義をしたし、わたしのイギリスの友人はシャワー専門
でバスタブに浸かるなんてこどもの頃からしたことない
よ。だってめんどくさいだろう。と言っているのだから、
風呂場での事故数を欧米と比べてもなんの意味もないの
だが、それはそれとして冬場に風呂場で死ぬ人がとても
多いというのはほんとに気になる。
裸になった寒さで血圧が下がり、湯に入った熱さで血圧
が上がり、という短時間での血圧の急上昇急降下によっ
てひきおこされる心筋梗塞や脳梗塞が死因だという。
数日前には浅川マキさんがコンサート会場に行く前に入
った風呂で亡くなられた。享年62の若さである。たし
か心筋梗塞だった。
10前の12月には舞台監督のパンチョ半沢も風呂で死
んだ。リハーサルスタジオへ出かける前の寝起きのひと
風呂で40になったばかりの働き真っ盛りの脳梗塞での
死だった。
伊豆山の寓居での楽しみに起きがけの朝風呂があるが、
医者に言わせれば、たしかに温泉大浴場は家の内風呂と
ちがい暖房が入っていて裸になったときに寒いというこ
とはないでしょうが、それでも身体がまだ十分に目覚め
ていない状態で湯舟にどっぷりと浸かることは避けた方
がいいとの忠告である。
今日は寒さはそれほどでもないが、大寒です。
どうぞみなさん。この寒さを元気に乗り切って暖かい
春を迎えようではありませんか。