2011年4月20日
少女の死体は、夕暮れの湖畔に流れついた。
パラダイス署の者たちは死体を見るのをいやがった。
水に長く漬かっていた死体は不愉快なものだ。
やむなく死体を検分したジェッシー・ストーン署長は、
少女の耳の後の弾痕に気づく。何者かが少女を射殺し、
死体を湖に投げ込んだのだ。
少女の身元はなかなか判明しなかった。湖畔で発見され
た指輪を手がかりに、ようやくジェッシーたちは少女が
この夏、ハイ・スクールを中退したビリイであることを
突く止めた。
だが、ビリイの家をたずねたジェッシーに母親は告げる。
「うちにはビリイという娘はいません」
家族に見放され、家出同然に大都会ボストンへ出た少女
に、いったい何があったのか?
*
警察署長ジェッシー・ストーンの推理と調査が大都会の
暗部に迫る。巨匠パーカーが贈る、男気満載のシリーズ
最新作!! (2001年の新作)
「Death in Paradise」
by Robert・B・Parker
「湖水に消える」ロバート・B・パーカー。菊池光=訳
早川書房
小説「湖水に消える」は、休日に草野球を楽しんだ後、
ビール片手にチームメイトと談笑しているジェッシーの
ところに湖から若い娘の死体が上がったと報告が届くと
ころから物語が始まる。
主人公ジェッシーは、高校時代から期待されたベースボ
ールプレーヤーで、ロスアンジェルス・ドジャースから
ドラフト指名を受けマイナーリーグでプレーする。3A
のダコタ時代にゲームで肩を負傷しメジャリーグーでプ
レーすることなく球界を去り、父親の後を追うようにロ
スアンジェルス市警の殺人課刑事となる。
成績優秀なるも結婚生活では関係が安定せず、酒に溺れ
た挙げ句、勤務中の飲酒が原因で職を失い、妻と離婚し、
今はロスアンジェルスを遙か遠く離れた東部に流れ、マ
サチューセッツ州のパラダイスという小さな町の警察署
長を勤めている。
ジェッシーは捜査を進める中で殺された少女ビリーの通
っていたハイ・スクールを訪ね校長のリリー・サマーズ
と知り合い、互いに惹かれあいステディーな関係になる。
32章はリリーがジェッシーの家に泊まり、翌朝帰ると
ころから始まる。その後、マサチューセッツの大物ギャ
ングの登場となるなどスピーディーでスリリングな展開
は、さすがハードボイルド小説の真骨頂であるが、章の
書き出しの文章がすばらしい。あまりに素晴らしい。日
本人の作家でいえば、藤沢周平の蝉時雨に匹敵する名文
だろう。
「ジェッシーは、リリーが家に帰る前に一緒に朝食をし
て、出勤が遅くなった。小さな町でしか経験できない
深みのある静かな夏の朝だった。雲一つない。暑い。
静寂。まるであらゆるものが永遠に生き続けるような
感じだった」
ここまで読んだとき思わず目を閉じ、あの夏の日を思い
だしていた。20代の前半は彼女いない歴云年間のこざ
っぱりした時代だったが、代わりと言ってはナンだが大
学の気の置けない男3人と深く親交していた。その後、
彼らは故有って大学に残り学業を続けるわたしを残し社
会の一構成員となっていった。その数年後にはわたしも
彼らの後を追うように社会に出ることになるのだが、出
た直後に3人の男と出合った。
そして大学時代の男3人、社会で知り合った男3人とは
今だにつき合いが続いている。この6人は時に合流し、
常には別々に人生をおくっているが、出合った頃の夏は、
まるであらゆるものが永遠に生き続けるような感じがし
ていたものだった。
中原中也が、「頑是無い歌」で、
思えば遠くに来たものだと詠ったのは12歳の頃の事だ
ったが、それに比べて、わたし達は大いに遠くに来たも
ので、今、こうして眼下に芦ノ湖を見下ろすスカイライ
ンの休憩所に休み「湖畔に消えた」を読み、あらゆるも
のが永遠に生き続けるような気がした夏という文章を読
み、6人の男どもとの春秋幾星霜と去っていった女ども
のことを思いだしていた。
俺は(わたしは)よく女に叱られる奴で、というか女を
叱ったことはまず一度もない奴で、だから構われなくて
は生きていけない女どもは去っていってしまうのだろう
けど、それはもしかしたら、俺が(わたしが)ロンググ
ッバイのマーロウのあの科白、
「男はタフでなければ生きていけないし、優しくなけれ
ば生きる意味もない」
と言う言葉に骨の髄から感化されてしまっているのだろ
うと思うと、この大災害の時代をどう生き抜くかにつき
ましては、強く優しい男が求められているのであるから、
ハードボイルド小説を読むも大きに役に立つというもの
だろうと考えます。上を向いて歩こうを歌うだけじゃ解
決はしないだろうとも考えます。
追申
芦ノ湖スカイラインの休憩所で「馬油」を見つけ毎朝の
ひげ剃り後に使っているが、なんでも、馬油にふくまれ
る成分が誠に人の肌に相性がよろしいようです。余計な
ものは使わずともこれ一本で可だそうです。お肌に水分
を水分をと余計なことをすると、まるで水でビショヌレ
になった新聞紙が乾くときにゴワゴワになるように、お
肌もゴワゴワになるそうですから気をつけて。
この馬油は宮崎県で造られて箱根に運ばれて来ています
が、解説書に
「白く・美しく」
「お肌に潤いを与えます」
「合わないときは使用をとりやめて」
などという定番の言葉に並んで、
「旅のみやげに使い方色々!!」とはじめっから土産対
応になっているのがご愛敬じゃございませんか。
ではでは。