2006年11月15日
大リーグのどの球団がいったい幾らで松坂を入札したの
かが、ここ数日スポーツ新聞はもとより一般新聞も1面
に記事を載せ賑わっていた。
下馬評ではヤンキースが最高額。
数日前は、パドレスがヤンキースを上回る金額らしい。
翌日には、メッツが最高額で交渉権獲得か。
昨日は、大リーグの公式ホームページではレッドソック
スと推測される。と発表し情報は入り乱れた。
入り乱れたのは、大リーグと西武ライオンズの間で、正
式発表までの間、どの球団が幾らでという事について箝
口令を牽いたことで憶測が憶測を生んだここ数日だった。
今朝のめざましテレビでも「まもなく発表。松坂はどこ
へ」と題し、かなり長い時間をさいて報道していた。
画面では、フジテレビのニューヨーク特派員が、この件
に関しアメリカでも非常に高い関心をもたれているとリ
ポート。おなじく画面に映っているアメリカ人は、京都
大学の出身者で流ちょうな日本語を喋る大リーグに詳し
い関係者という人で、レッドソックスに間違いないと思
うが、はたしてポスティング・システム(入札制度)は、
大リーグと日本のプロ野球の関係をより発展させるもの
であろうか?との提言もしていた。
松坂投手は子供のころから大リーグを夢見ていた。高校
を卒業後プロ野球の世界に飛び込んだのは、FA権を獲
得する9年後にまだ27才の若さで大リーグを目指せる、
という考えは十分にあったのだろう。
松坂は、数年前から一日も早く大リーグを目指したいと
いう希望を球団につたえ始めていた。球団は希望は叶え
る方向で検討はするがFA権を獲得してからの移籍では
いかがだろうか。と両者の話し合いには溝もある。さて
日本球界の至宝、松坂の去就は。とここ数年報道されて
いたが、あと1年でFA権を獲得できるというこの時期
に、ポスティング・システムでの移籍となったのは、い
ったい、どういう理由があったのだろうか。
今日の午前10時、松坂の交渉権は、レッドソックスが
60億円で獲得したと発表された。あのイチローの入札
額が14億円であった事を考えると、あまりにも巨額で
ある。詳しくは知らないが、支配下選手の年俸総額が6
0億に満たない日本のプロ球団はゴロゴロあるのではな
いだろうか。広島カープ。ヤクルト。ロッテ。日ハム。
楽天。オリックス。ETC。ETC。
1軍が25人。2軍に25人として、50人の平均年俸
が1億円としても60億にとどかない。2軍なんか故障
で2軍で調整している清原選手、桑田投手などといった
高額年俸選手を除けば、そのほとんどが平均年俸数百万
円である。60億にとどくわけがない。金持ち球団とい
われる巨人、ソフトバンクでさえ超えているのかどうか。
大リーグの年俸総額最高額球団は、4軍まで抱えるヤン
キースで300億を遙かに超える。その次がレッドソッ
クスだが、200億を超える球団は、それほど多くなく、
総額100億を超えない球団も大リーグにはある。60
億という額がどれだけ異常であるかはおわかりになると
思う。
松坂が来年のシーズンを無事に終えFA宣言をすれば自
由にどの球団とも入団交渉ができる。どの球団というの
は巨人とも韓国リーグ球団とも台湾球団とも、もちろん
大リーグ球団ともできる。ただし、その場合は、移籍権
は松坂にあるから、現在所属の球団には関係ない。とこ
ろが、ポスティング・システムでの移籍となれば、球団
対球団の交渉だから、当然、この60億は球団が獲得す
るもので松坂とは一切関係がない。
ベースボールビジネスとしては十分理解できるが、この
システムはあまりにビジネス臭がきつく感じられる。
契約金を払い、年棒を決め入団し、選手が大活躍をして、
FA権獲得直前にこのシステムを使い交渉権という巨額
マネーが入ってくるのが日本の球団のビジネスモデルと
なれば、いつの日か日本球団は大リーガーの供給源でし
かなくなるのではないか。そしてこのシステムはFA権
を有しない選手の希望を叶える手段として一見合理的に
見えながら、その実はあまりにも例外的措置で、人身売
買権とも云えるものである。こんなシステムは止めるべ
きだ。
日本球界が考えなければならないのは、公正なドラフト
制度の実施(選手の希望はなく球団の意志)とその制度
の代償としてのFA権(球団の意志ではなく選手の希望)
という関係の正常化である。
逆指名制などという密約にも似たトンデモナイ制度がま
かり通っているのが日本球界である。その上にポスティ
ング・システムだとォ。どこまでも球団に都合良くでき
すぎている。野球というスポーツに憧れる子供達の夢は
どこにあるというのだ。
こんなことで日本の野球界は発展するのか!
喝!と張本さんは叫ぶ。大沢親分も喝だ!と叫ぶ。
松坂のチーム入りをウエルカムしたレッドソックスにも、
FA権を待たずに松坂の希望を叶えた西武にも、大リー
ガーを夢見た松坂にも、大変ハッピーな事であろうから、
チャチャを入れるつもりはないが、めざましテレビに出
ていたアメリカの大リーグ関係者の提言もそこにあるの
ではないか。