2007年11月7日
車中で倅との会話。
「もうすこしちゃんとした恰好で腰かけてろよ」
「そういえばおとーさん。やけにちゃんと座って運転し
てるね」
「この間おばあちゃんを整体治療院に連れてった話はし
たよな。その時に俺も見てもらって、ちょいちょいと
触ってもらって骨は真っ直ぐにしてもらった」
「ちょいちょいと触っただけで骨真っ直ぐになるの?」
「良い質問だな。俺もそれで直るのか? と思ったが治
療してもらって真っ直ぐになりましたと言われちゃあ、
ホントですか? と聞くわけにはいかんから、その質
問はしていない。そう言うからそうだと思ってるんだ
がね」
「で、姿勢がいいんだ」
「できるだけ楽な格好をしようとするとつい筋肉がその
形に出来上がると言うことでな。その格好がかならず
しも正常な真っ直ぐな姿勢というわけじゃないから楽
な姿勢ではないが、まあ、かしこまって運転しとるち
ゅうわけやな。最近は仰向けに行儀良く寝てるよ」
「なんのことかさっぱりわからんけど、俺はうつ伏せで
寝るのが好きだね」
「それも寝る姿勢としては悪くないそうだぞ。動脈静脈
は背骨に沿っているから、うつ伏せのほうが血管大動
脈には圧がかからない=身体に優しいという説だがね。
あー。この練馬ナンバーのベンツのタコ! ウインカ
ー出さずに車線変更するなよなァ。危ないじゃないか」
「路地からいきなり飛び出す自転車もいるよ。あれは危
ないね。この間なんかぶつかりそうになったよ。近く
の中学の女子生徒二人乗りでさあ。それでもって二人
ともメールしながらチャリに乗っててさあ。中学の女
にこらー! て怒鳴るのも大人げない感じがしてただ
通り過ぎるのを見てるだけだったけど」
「大人げないか。お前は大学生だから立派な大人かな」
「ホンキートンキークレイジー I Love You」
カーラジオから曲が流れてきた。
「アレ? この曲ホンキートンキークレイジーじゃない
か? この曲知ってるか?」
「知ってるよ。おとーさんからもらったCDに入ってた」
「そうだァ。俺この曲でドンドンドンドンドンドンって
なる太鼓叩いたんだ。忘れてたなァ。今急に思い出し
たぞ」
「エー! なんのこと?」
「いやね。ベルリンのスタジオでリズムのレコーディン
グが終わって、パーカッション的なドンドンドンって
いう太鼓をダビングしたんだがね、マコトと布袋が二
人で叩いたんだけどもう一人太鼓を叩いた方がいいな
あ、3人で叩いた方が迫力が出るかもなあ、誰かいな
いかっていうことになって、ちょうどスタジオにいた
俺が狩り出されたんだよ。アッ! このヘイボーイヘ
イボーイってコーラスにも参加したぞ!。いやァなつ
かしいなあ」
「レコーディングに参加したんだ! 凄いねえー」
「いや、凄いって云われるほどじゃないよ。叩く奴は別
に誰だって良かったんだから。コーラスもね。たまた
ま手が空いてる奴が俺しかいなかっただけだからね」
「凄いなあー。おとーさんレコーディングに参加してる
んだ」
「いやたまたま俺しかいなかっただけだって。今度ゆっ
くりあの当時のベルリンの話をしてやるよ。おもしろ
い話が山ほどあるからなあ。俺だけのものにしておく
のはもったいないよ。そうだこの時はレコーディング
同行記を書いて音楽誌にも載せてもらったよ」
「凄いなー。それもまた」
「いやいや。売れる前だったから音楽雑誌の記者をベル
リンまで連れてく予算がなかっただけだよ。本人達が
書くわけにはいかんから、ついでに書いてくれって頼
まれただけだ。まあ、これまたついででね」
「そういえば冷蔵庫の中にあるおとーさんが買ってきた
豚の挽肉、たしか賞味期限が今日だったよ」
「あれは食ったよもう。ハンバーグにしてな。つなぎも
何も入れず豚肉だけのハンバーグだったが、以外と美
味かったぞ。朝からハンバーグってのもいかがかと思
ったがね。賞味期限ぎりだったからしょうがない。で
も俺は朝をしっかり食うってのは好きなんだ。お前も
たまに朝からハンバーグ食ってるじゃないか」
「おれも朝飯抜きはきついんだ。姉ちゃんなんか、朝は
食欲がないってホントに軽いものしか食べないけどあ
れで仕事もつのかねえ」
「ダイエットだったりしてなあいつの場合は。ハーイ着
きましたぜ坊ちゃん。そっちの大きい方の荷物もって
さきに家にもどってな。俺は車を駐車場に入れてくる」
家にいるときは顔合わせても用件以外互いにロクに口も
きかないけど車の中だとこんな風に話が弾むときもある。