2008年6月4日
虫歯予防デー。
うしはよほーえー。うしはよほーえー。
と呪文のように唱え、歯を磨く。口を開けて歯を磨くか
ら、ポタポタと白い泡がこぼれ落ちた。ちゃんときれい
に拭いておきなさいとかみさんに叱られた。
こうでなけりゃ。1日1回はかみさんに叱られないと、
1日が始まった気がしないのだ。
森永博志の「初めての中国人」の草原に住む人々の話に
刺激されて、マルコ・ポーロの「東方見聞録」を読む。
1970年に平凡社から発行された愛宕松男訳の東洋文
庫・158は文字が小さすぎてまことに読みにくい。
この本を買った1970年と言えばウッドストックコン
サートの翌年で、40年も前のことである。あのころは
どんなに小さい字も読めた。今ではそうはいかない。
乱れた心が目に表れるが如く乱視が進みまくっていて、
小さい文字は眼鏡をかけていても、まあ読みにくい。
本を書棚にもどすと、すぐ近くに社会思想社から発売さ
れた青木富太郎訳の「東方見聞録」があるのを見つけた。
しかし、忘れっぽいのは今に始まったことじゃないな。
同じ中味の本を2冊買っているんだから。
さてこの青木訳本は1983年刊となっているから、愛
宕訳よりも新しいのだろうと思ったが、違っていた。
奥付を見ると本書は1969年に現代教養文庫で刊行さ
れたものであると書かれていた。
愛宕本1970年。青木本1969年。
どう思い出しても思い出しきれないが、40年ほど前の
この時期はマルコ・ポーロブームでもあったんだろうか。
マルコ・ポーロの父とその弟が商品をたずさえベニスか
らコンスタンチノープルに出かけたのが1260年。
日本ではイイクニツクル鎌倉幕府の成立から約70年後
のことで、ポーロの息子のマルコが大人になり、東方に
出かけるのはさらに20年程後年になる。それにしても
700年も前の本が翻訳されて、別々の出版社から同時
期に出版されるなんて、ブームでもなければ考えられな
い。
考えてもごらんなさいよ。「東方見聞録」と同時代の著
作と言えば鴨長明の「方丈記」や兼好法師の「徒然草」
があるが、この2冊がいくつかの出版社から同時に発売
されるとなれば、ナンラカの鎌倉時代・長明ブームや兼
好法師ブームでもなけりゃ今更発売なんて考えられない。
当時の記憶をたどるが、学生寮のことや麻雀で負けまく
ったことやアルバイト先の寿司屋のことや彼女いない暦
が2年も続いたことなど思い出すが、マルコ・ポーロブ
ームについては片鱗も思い出さない。どなたかそのあた
りのことを知っている人がいるのなら教えてほしいが、
しかし、青少年期にマルコ・ポーロブームがあるなんて、
わたしたちはなんて幸せだったんだろう。
森永博志も北京・上海だけでなく、ただシシカバブを食
うためだけに新彊ウイグル自治区のウルムチの路地裏ま
ででかけようなんて、我らが心の中の旅人マルコ・ポー
ロの存在無しには考えられないからである。そういう意
味では森永の「初めての中国人」は西方見聞録といえそ
うである。
もう一度ウッドストックブーム起きないかな。
もう一度マルコ・ポーロブーム起きないかな。
青少年期にこういった物に感染した人間と無感染の人間
では、過ごす一生の意味が違うと思うのである。